性格は変えられる

ほとんどの哺乳類は、成体に近い形で生まれてきます。生まれてすぐに外敵や様々な環境に適応しないと生き延びられないからです。

野生動物の多くは生まれて数時間で自分で立ち上がり歩くことができます。当然、脳が機能していないとそれは不可能です。ですから、そういった動物たちは出産時にはほぼ脳が完成されているのです。

では、人間の場合はどうでしょう。

生まれたばかりの赤ちゃんは立ち上がるどころか感覚器官も発達しておらず、成体には程遠い状態です。もし敵がいたとしたら、なす術はありません。人間は脳が未完成の状態で生まれてくるのです。

性格は変えられる

赤ちゃんの脳はまっさら

人間の赤ちゃんの脳は、何も入っていない新品のパソコンのようなものです。

パソコンは外身(ハードウエア)があっても中身(ソフトウエア)が入ってないと、何にもできません。ハードウエアにOS(オペレーションシステム)や必要なアプリ(プログラム)といった様々なソフトウエアを次々とインストールしていくことで、様々な動作や活動ができるようになるわけです。

実際、誕生後の人間の赤ちゃんの脳細胞の数は成人とほとんど変わりませんが、脳神経細胞の繋がり(シナプス)が出来上がっていません。生存に必要な最低限の繋がりだけで、人間らしい知能はおろか、自分の体を動かすための繋がりすら出来上がっていないのです。

お母さんの声や表情、肌の触れ合いといったものを刺激として受け、その刺激に反応し適応していくことで、どんどん脳神経細胞同士が繋がりあってシナプスを増やし、脳神経回路を形成していきます。その結果、お母さんからの刺激の意味を理解できるようになり、それらの刺激を関連付けて、複雑な条件下における刺激に対し、最適な反応・判断を選択するようになっていくのです。

さらに親からのしつけを通じて、より複雑な環境からの刺激に対する反応回路を作り上げていきます。これがいわゆる性格として機能します。

人格の形成

成長するにつれ、家庭以外の環境からの刺激を受ける経験が増えてきます。社会との接点が増え、行動範囲が広くなっていくと、それだけ違う刺激が脳に与えられるわけです。

ここで新しく受け取る社会的な刺激は、道徳観、倫理観、常識、マナー、法律などです。そういった社会環境からの刺激に反応し、新しく適応していくことで、さらに新しい脳神経回路(シナプス)が増えていきます。

環境が変われば、その環境ごとに最もふさわしい振る舞いも違ってきます。ですから、その環境に適した違う脳神経回路(シナプス)を使い分けていくという術も身につけていきます。

このようにしてまっさらだった赤ちゃんは、個としての人格を持つに至り、大人になっていくのです。

「気質」、「性格」、「人格」の違い

「あの人の性格は理解できない!」
「彼は素晴らしい人格の持ち主だわ。」
「あの人の気質はやっぱり変わらないね。」

「人」を表現する際によく使われるのが、気質、性格、人格の3つです。

でも、これらって何が違うのだろうって思いませんか?

ほとんど同じ意味で用いられているこれらですが、厳密にいうと実は全く違うんです。

気質「Temperament(テンペラメント)」

気質というのは、人間や動物に見られる先天的な外界からの刺激などに対する反応パターンのことです。これは遺伝子情報によって決定されているため、生まれる前から決まっています。

パソコンであれば、製造段階で備え付けられているCPUだとかの電子回路に相当します。

ラテン語の「ほどよく混ぜ合わせる」に由来します。

性格「Character(キャラクター)」

性格というのは、後天的に身につけた、外界からの刺激に対するする感情的・意志的な反応パターンのことです。これは気質に基づいた幼少期の体験によって形成されます。

パソコンであれば、パソコンを動かすための基本システムであるOS(オペレーションシステム:WindowsとかmacOS、スマホのandroidなど)に相当します。

ギリシア語の「刻み込まれたもの」に由来します。

人格「Personality(パーソナリティー)」

人格というのは、性格に道徳的な価値観を加えたものです。これはある環境から求められる一定の役割を果たそうとするもので、状況によって変えることのできるものです。

パソコンであれば、WordやExcelといったプログラムやLINEやYouTubeといったアプリに相当します。

ラテン語の「仮面」に由来します。

性格や人格は変えられる

気質というのは先天的なものなので、変えようと思っても変えられないし、むしろ自分の気質を「これが自分なんだ」と受け入れてしまう方がはるかに幸せに生きることができると思います。

それに比べて性格や人格は、生後外界から受けた刺激によって身につけたものですから、自分固有のものではないので、変えようと思えば変えられます。

ただ、今までの経験で上手くいったものだけが性格や人格となっているので、それらに変化を加えることは脳にとってかなりリスクが高いのです。

特に大人になればなるほど経験値が増え、性格や人格を形成する脳の神経回路(シナプス)もとてつもなく強固になっているので、非常に変えにくいのも事実です。基本的に脳は変化を嫌うので、好き嫌いや良し悪しに関係なく、現状を維持しようとホメオスタシスが働くのです。

ですから、性格や人格を変えるには、なりたい自分を強くイメージし、そのイメージに準じた、「今までやったことのない行動」をとって、全く新しい経験を積んでいく必要があります。

膨大な数の脳の神経回路(シナプス)を繋ぎ直すわけですから、ある日突然全く違う自分になることなどありえません。なぜなら、実生活の環境から日常的に受けている刺激を変えなければ新しいシナプスが定着しないからです。

継続的に新しい体験を積み重ねていく。一見遠回りに思えても、これが自分を、そして人生を変える近道なのです。