キレやすい人の脳の特徴
人はなぜキレるのか?
怒りのメカニズム
実は怒りには大きく分けて2種類のタイプがあります。
一つ目は衝動的な怒りです。
これは全ての生物に備わっている生命維持のための本能的メカニズムです。
命の危険を感じさせるものから身を守るために戦うか逃げるか(Fight or Flight:闘争・逃走反応)のどちらかの行動を取らせます。
もう一つは戦略的な怒りと言って、極めて冷静な判断の結果、怒るというもの。
これにはいくつかパターンがあって、
- 自分の正当性を相手に訴えるため
- 強制力維持のため
- 社会的制裁のため
- 報復のため
- 失ったプライドを取り戻すため
と言ったものがありますが、結局どれもが自分の正しさを相手に認めさせるための効果的な手段として怒りを使うのです。
キレるとはどんな状態なのか?
人は自分の中に怒りが生じた後には、だいたいこの中のどれかを選択して行動に移します。
1.自分が悪いと謝る
2.話し合って解決を図る
3.怒りをぶつけたいが我慢する
4.その場から逃げ出す
5.相手を攻撃する
私たちは他の動物と違って社会性のある生き物ですから、怒りを感じても他人との関係性など、状況を判断して大抵1〜3のどれかを選択します。
そして、さらに新しい怒りが発生しても、まだ1〜3の中から行動を選ぶ余裕があります。
しかし、その余裕がない場合、怒りが発生した瞬間、4.逃げるか5.相手を攻撃するか、と言った自分の命を守るための最終手段しか選べなくなってしまいます。
これがキレるという状態です。
一般的にキレるとは相手に対する攻撃行動のことだと思われがちですが、実は逃げ出すのもキレた結果の選択行動なのです。
キレるとは、生命維持のための本能がむき出しになった状態なのです。
心の三原色と怒り
人の感情は、基本的に3つの脳内神経伝達物質の量で決定されます。
- ドーパミン(喜び・快楽)
- ノルアドレナリン(怒り・恐怖)
- セロトニン(精神安定・快&不快の調整)
この3つの神経伝達物質の配分量が特定の感情を作り出しています。ですので、この3つは心の三原色と呼ばれています。
このうち、生命維持の本能を司っているノルアドレナリンが増えると、怒りの感情が作り出されるのです。
この心の三原色のバランス、つまり3つの脳内神経伝達物質のバランスに乱れが生じると、怒りが生み出されやすくなるわけです。
ここで大切な役割を果たしているのが、セロトニンです。
通常は、セロトニンが働いてノルアドレナリンの分泌が過剰にならないように調整しているので、怒りが抑制されているのですが、このセロトニンの量少なくなるとノルアドレナリンの調整が効かなくなり、大きな怒りが発生しやすくなります。
キレる原因の一つが、このセロトニンの欠乏にあったのです。
キレるもう一つの理由に、理性のコントロールができないというものがあります。
大脳辺縁系で作り出された喜怒哀楽という本能的な感情は、大脳新皮質による理性のコントロールを受け、制御されています。
具体的には、グルタミン酸、ギャバ、この2つの脳内神経伝達物質で行われています。
グルタミン酸は本能的感情を表に表に出そうとし、ギャバは逆に本能的感情を抑制しようと働きます。いわばアクセルとブレーキの関係ですね。
この理性の働きは、大脳新皮質、とりわけ前頭前野と呼ばれる場所が成長していく過程で経験により学んでいきます。
成長過程で我慢の仕方や問題の解決方法を学んでいないと、十分に神経回路が発達せず、感情のコントロールができずに本能の欲求のまま行動してしまう、つまりキレやすくなってしまうのです。
理性が発達している人は、怒りが発生したら即座にブレーキを踏んで怒りを抑圧します。つまり心の三原色のバランスが取れている人は、怒りが発生しにくく、発生したとしても十分に対応できるというわけです。
ところが普段からセロトニンが欠乏気味で、よく怒りを作り出す人は、怒りを表に出さないようにブレーキを踏みっぱなしの状態になります。感情を抑圧して理性のブレーキを踏み続けている人は、常時多量のギャバを消費していることになります。この理性のブレーキが効かなくなった時、つまりギャバを使い切ってしまった時にも、人はキレてしまうのです。
キレる=脳内神経伝達物質切れ
結局のところ、セロトニンやギャバといった脳内神経伝達物質が切れてしまうと、キレた行動をしてしまうということです。
これが、心に余裕がなくなった状態です。心の余裕は、脳内神経伝達物質の余裕でもあるのです。
神経伝達物質が不足している人にモラルを求めるのは、実は酷な話なのかもしれません。